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未亡人の一年
book
『未亡人の一年』〜A Widow for One Year〜
ジョン・アーヴィング著 都甲幸治・中川千帆訳 新潮文庫

1958年、4歳の少女ルースは両親の寝室から聞こえてくる奇妙な音に目覚め、母とアルバイトの少年エディの情事を目撃した。死んだ兄たちの写真が貼り巡らされた家。浮気をくり返す絵本作家の父。悲しみに凍りついた母は、息子たちの写真だけをもって姿を消した。この夏の出来事が幼いルースと16歳のエディの心に残したものは……。<文庫裏表紙紹介文より>

この土日で読了できました。うーん、よかった。面白かったです。映画の先が、本当に面白くなる展開でした。
 
姿がなくとも常に感じることのできるマリアン。あのラストには一気にやられてしまった(涙)これぞ物語を読む醍醐味ですね。残り2章になってしまったときは読むのが惜しくて、でも先が知りたいしで、急ぎたいのか止まりたいのか困るような感じを味わいました。(いい物語はいつもそうですよね)
 長い長い物語です。読むのに時間のかかるという意味ではなく、40年弱にわたる物語で、読んでいる自分も長い旅をしたような遥かなる気分になるという意味で。挫折したり、本自体を列車に置き忘れてきたりではるばると縁のなかった(変な日本語^^;)アーヴィング作品でしたけれど、いやぁ、よかったなあ。好きですこの話。1958年から始まるのもよかった。

 映画化された『ドア・イン・ザ・フロア』では、いまひとつ登場人物たちが署ルみ難く何を考えての行動なのか図りかねるところがあったのですけど、読みながら最初意外な気がし、すぐに(あ、そうなのか)と納得がいきました。人間て不思議な生き物ですものねえ。私、テッドはてっきり愛情からそうしたのかとばかり…。バカだなあ私。
 意外といえば、テッドとエディとルースが自分の無意識の予想とは随分と違う人間として歳を取っていっていたこと。特にエディとルースが想像を気持ちよいくらいに裏切ってくれていました!
 それと、アーヴィング体験新参者の私からしたら嬉しかったことがひとつあって、それは、悲惨、悲痛、悪夢に淫してるようなところがまったくないこと。起こっていることはかなり悲しかったり酷かったるするのだけど、そこで何度も重大さを再確認しなければならないようなものを感じさせず、軽やかに淡々と、参っちゃうよね、まったく酷いだろ・・という感じで、どんどんいってくれちゃうところ。そこがすごく新鮮で、気楽で、立ち止まらずに歩き続けて(しかもずっと同じ速度で)しまうかのようでしたわ。さらに、乾いていて冷たくもない不思議な滑稽ささえあって、それが無責任なものでないというのがかなり救いになってるよなーと感じました。一定の高さを低空飛行しながら秋晴れの空をまっすぐに飛び続ける飛行機の目線というのかしら…。そうそう、それと一度でも出てきた人物のことは、大抵最後までかなり覚えていられるのもすごい^^;描写が五感に反応しやすいのかしらん??
 もうひとつ贅沢で面白いのは、登場人物の多くが作家で彼等の作品が作中で読めてしまうということ。(つまり、アーヴィングのおとぎ話をいくつも読めてしまう!!)
ルース・コールの『赤と青のエアマットレス』、この中の主人公ジェーン・ダッシュが好きになってしまったし、エディの『気難しい女』の一部には吹き出さざるを得ない可笑しみが。(だって、だってエディったら大真面目にそんな…。でもちょっとここ泣き笑いだったのですけど)
テッド・コールの子ども向け作品の恐ろしさは、そのまま「モグラ男」の章に集約されていき、かなり不気味で印象的。
4歳のルースの傷についてのエディの言葉の解釈は、映画で見たとき感じたものは少し違っているのがわかりました。君はどんどん大きくなるが傷はどんどん小さくなる。だから乗り越えられるのではなくて、傷は常に君と一緒だから現状を乗り切れる・・に近いかなと…。
 愛する者を失うという体験をする主要人物たちには、それぞれ5割程度の感情移入をするくらいで読み進み、特別に誰かの目線で物語を感じるということがほとんどないという、自分にしたら少し珍しい体験をしました。例えばコンチータやエドゥアルド、ハリーやローイエのほうがよほど感情移入しやすい人物かも。ハブロックさんや、ミンティとか。不思議にも、一度だけスコットがルースを殴る時の気持ち、逆襲されている時の気持ちが強烈に印象に残っていたりして。(それはそれでどーなんだという気もするけれど)
 これは作家の本音らしい…と思える箇所や、ここはあえてファンタジー色を強くしてる…などと強く感じる箇所もあり、そこら辺も面白かったです。
 読後に何よりもまず感じたのは自分の心の平安でした。それも少し珍しい。もちろん自分の経験した様々な思いがざわつくことはざわつくのですけど、それが苦にならないというか…。
 この愛をめぐるおとぎ話は、とても変わっていて不思議ですてきでした。
 先に見た映画は、うーむ・・また全然別物のような気がしてきたなあ。ちょっと全体を覆う空気感が違うような感じがするというか。俳優さんたちも、マリアンは少しキム・ベイシンガーが見えないでもなかった(映画の彼女もすごくよかったし)けれど、小説を読みながらなんとなく浮かんできたのは結局全員見たことのない人たちばかりでした。それも珍しい。いつもなら、映画のあとではかなり役者の顔がちらついてしまうタチなので…。ちらつかなかったのは、『太陽がいっぱい』とこのお話くらいかも。

 ルカさん、お薦めしてくださってありがとうございました。大事な一冊になりそうです。文庫本購入しておいて正解でした♪
雑談 | comments(4) | trackbacks(1)
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Comments
武田さま、こんにちは。ルカさまより先に、コメント失礼します。
TBはこちらからも不調のようです。また改めてトライしますね。
さて。読了おめでとうございます!愛をめぐるおとぎ話。本当にそうですね。私も大好きな作品です。
ただこの作品の小説内小説(?)、私はあまり好きになれませんでした。
うれしかったのはルースの子が好きな絵本が『マドレーヌ』シリーズだったこと。
子が幼稚園の文庫でよく借りてきて、私も大好きでした。
(あ〜、幼稚園、たった一年前のことなのに、遥か昔のことのよう・・)
キャストが浮かばなかったというのは何故でしょうね? 作品の世界が武田さまにとって完璧に近かったのかしらん?
私はビッチなレイチェル・ワイズもいいかなと思い、ハナに推しましたわ(笑)。
ではでは、また来ますね。
Posted by 真紅 | 2006/10/31 1:10 AM

武田さん、こんばんは!
うわぁ、武田さんの感想を読んでちょっと感動してしまいました。
まさに私がこの作品に対して感じる事が書いてあって。
そうなんですよね、登場人物それぞれが変わってて、決して褒められる人物像ではないんですけど、愛すべき忘れがたいキャラクター達で。
悲惨な事や酷い事がばんばん起こるんだけど、みんな何とか乗り越えて進んでいくっていうのは、アーヴィングの作品すべてに言える事だと思います。
長い長い物語の最後がいつも温かいもので包まれているのも好きなんですよね。
武田さんが気に入って下さって、しかもアーヴィング作品のツボをしっかり見つけて下さったのがすごく嬉しいです♪
映画化されている(ほとんどされてるか・・)「サイダーハウス・ルール」や「オウエンのために祈りを」もいいですよ〜!オススメはもう全部ですけど(笑)
ドクター・ラーチがケイン様も素敵なんですけど、さらに愛すべき変わり者で、これまた映画とは違う空気感を堪能出来ると思います。
また機会があれば是非〜!



Posted by ルカ | 2006/10/31 1:44 AM

こんばんは〜♪
早速コメントをくださって、ありがとうございます。(TBなかなか難しいですね。でも、ワタクシ負けませんわっ ←何事?)
とてもいいお話でしたねぇ。なんだか、アーヴィングへの勝手な思い込みがどこかへ消えてしまいました(笑)
『マドレーヌ』!真紅さまのコメントを拝見するまで気が付きませんでした!
そうか、あの「マドレーヌ」ですよね。これ。(遅い〜)
まぁ、幼稚園で借りてきていたなんて素敵ですわ♪
(うちの子は、おやじギャグの新ネタ披露ばかりしていて、いったい図書館で何を読んでるの??と不安になります。
小学校にあがると、幼稚園の日々がまるで何年も前の遠い昔に思えてしまいますよね。ああ、日々は早いなぁ・・・)
ほんと、なぜキャストが思い浮かばなかったのか不思議です。
レイチェル・ワイズのハナ!似合いそう♪テッドはジェフ・ブリッジスじゃないのじゃないかなぁ・・とそれが一番気になりました。実は(笑)

Posted by 武田>真紅さま♪ | 2006/10/31 9:31 PM

こんばんは〜♪
コメントいただきありがとうございます!!
ほんと素敵な物語を読んだ充足感でいっぱいでした。ラスト、あんなにじんわりきて涙してしまうとは〜〜。素敵な本を紹介してくださって、とても嬉しいです。ありがとうざいました♪
それで・・・いやぁ、もう感想書いてからなんだかドキドキしてしまって・・。
「それ違うし!そういうことじゃないのよ!」と叱られるかも、でも初心者だからまぁ仕方ないよね、ってことでOKにしてもらえるかしらん?とか(笑)
そうズレまくりでもなかったようでホっとしました。ルカさんがお感じになったようなことを自分も同じように感じることができたというのはとても嬉しいです♪ ほんと、愛すべき登場人物たちばかりでした。人間くさくて、どうしても憎みきれないというか・・・。
アーヴィングはちょっと入りにくくて難しくて・・というイメージだったのですけど、ああ、今になって新幹線に置いてきた『サイダーハウス・ルール』がものすごく惜しいぃ!(笑)まぁ、ドクター・ラーチがそんなに!!ぜひぜひ読んでみますね。『オウエンのために祈りを』というのも、タイトル、素敵ですね。探してみます!
また、ぜひお薦めの本を教えてくださいね♪ほんと感謝感謝です。ありがとうございました。
Posted by 武田>ルカさま♪ | 2006/10/31 9:42 PM

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