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Joy House 1954
喜びの家
『危険がいっぱい』
(原題:「Joy House」)
1954年 アメリカ 
デイ・キーン著 松本依子訳
ハヤカワ・ポケット・ミステリ



古本屋さんから『危険がいっぱい』の原作が届いたので早速読みました。
デヴィッド・グーディスの『狼は天使の匂い』や『ピアニストを撃て』などの既刊もある<ポケミス名画座>シリーズ。
テンポよくあっという間にラストにきてしまいました。
【以下、内容に思い切り触れてます】

******************************************

主人公マークは、天才と呼ばれたやり手の元青年弁護士。
金の誘惑に負け悪徳に手を染めていた彼は、更正を願い続けた愛する妻をはずみで殺してしまい、妻の兄であるギャングの追っ手から逃れて西海岸からシカゴへ逃げてきたのだった。
何もかもなくし、心身ともにぼろぼろになったマークが転がり込んだのは街の救済院。そこで出会った、慈善事業をしているアッシュ・ブロンドの若き資産家未亡人に運転手として雇われたマークは、かつての自分の依頼主で既に死亡している男になりすまし、未亡人、屋敷のメイドと共に暗い屋敷で共同生活を始めるのだが・・

******************************************

性的魅力に溢れた悪女に翻弄されつつも、主人公は結局ラストまで自己嫌悪と追われる恐怖と挫折感をかかえたまま暗黒の世界に堕ちておりました。
途中、マークの気持ちが一瞬の間にコロッと変わったりするので、少し読みにくく感じられましたが・・。
気になっていたラストは、映画とはまた違った〆になるのですがなかなか面白く読みました。ただ全体として女性が好んで読むようなタイプのお話ではないなあと。いわゆる女権拡張論者が読んだら怒り出すような感じの話だし・・^^;
喜びの家







こちらはライオン・ブックス社版「Joy House」


殺伐とした暴力性。主人公を襲う悪夢。美女がしかける狡猾な罠。
汚職、殺人、殺し屋に偽名といったキーワードを呼び込む、逃れられない陰鬱な過去。
女性嫌悪(同時に性的欲求も強い)に酒・酒・酒・・
なんというか、全体の印象はハリウッドの40年代〜50年代のフィルム・ノワールという感じでした。ひじょうにアメリカ的で・・

登場人物たちのキャラクターも、原作と映画ではまったく異なっていました。
”猫”と言われるのは、原作では若き未亡人のメイなのですが、うーん・・この猫は、猫を知らない人が描きたがる猫像そのものかも。あるいは男がヨワイ女のイメージ?簡単に言うと、猫=魅惑的な性悪、の図式・・^^;

その点、映画の猫族たちは、かなり本物の猫らしかったなあ。
各々の個人主義を貫いてるところが。
猫は常に自分が選ぶんですから・・

そもそも、原作には未亡人のいとこ”メリンダ”が出てきません。
美人でグラマーらしいメイドはいるけれど、重要な役ではまったくないので・・。
だから話もガラリと変わってしまうんでした。
未亡人メイは、映画のバーバラのような優美さを持つミステリアスな大人のマダムなどではなく、人格もまったく違っていたのでかなりガッカリ。読んでいてもあまり楽しくなれなかったな・・(彼女の性格の一部にメリンダがいる・・といえばそうなんだけれど)
主人公マークも映画のマルクとはまるで違っていて、何というのかしら、えーと、ちょっと精神の往生際が悪いというか・・。人間くさいといえばそうなのですけど・・。

原作を読んであらためて映画脚本を書いたルネ・クレマン、パスカル・ジャルダン、チャールズ・ウィリアムズの手腕に感じ入りました。
原作を上手に換骨奪胎というんでしょうか、見事に独自のプロットを生み出して新たな作品に仕上げているんだなあというのがよくわかって。
10年という時代の差もあるのでしょうか。
やっぱり私は、人間も展開もずっと魅力的な映画版のほうが好きです。
お互いの駆け引きも猫たちのほうが余裕と冷静さ、したたかさがあって粋だったし。可愛げさえあったもの。ラストの余韻も、映画のほうがはるかに奇妙で恐ろしく面白かった。

クレマン監督は『太陽がいっぱい』『危険がいっぱい』の2作品で、モーリス・ロネとジェーン・フォンダにアラン・ドロンを音もなく静かに捕えさせ、永遠に映画の中に封じ込めてしまったみたいですねー。

雑談 | comments(2) | trackbacks(0)
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Comments
武田さん、こんばんは。
「危険がいっぱい」の原作、よく見付けられましたね!
記事は、たいへん興味深く読ませていただきました。わたしの記事に追記で、こちらのページをご紹介させていただきました。

ルネ・クレマン監督は『太陽がいっぱい』パトリシア・ハイスミスの原作もそうでしたが、登場人物の概観だけを取り入れて、ほとんどオリジナルのような作品ですよね。
『パリは燃えているか』はオールスター作品の大作で素晴らしいですが、同じレジスタンスものとしては、初期の『鉄路の闘い』が強烈でした。わたしは姉妹編と思っています。

ジミー・スミスの『ザ・キャット』は、きっと、気に入ると思うなあ。聴かれましたら是非、記事にしてくださいね。

武田さんは、「祇園囃子」、「雨月物語」などのクラシックな作品も、お好きなのですか?凄いなあ。わたしのお気に入りでいうと「プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]」のオカピーさん、「良い映画を褒める会」の用心棒さん、「キネマじゅんぽお」のジューベさん、などが溝口監督の素晴らしい記事を書いていらっしゃいます。
日本の監督にも優れた方がたくさんいますよね。
では、また。
Posted by トム(Tom5k) | 2007/03/18 12:20 AM

トムさま、こんばんは。
えぇ、この記事を!?だ、大丈夫でしょうか・・(すごく心配です・・でも、ありがとうございます。)
そうそう、この原作本は2005年に出版されたものでした。復刊されたのかもしれないですね。

>登場人物の概観だけを取り入れて、ほとんどオリジナルのような作品ですよね。

ほんとそうですよね。脚本といい演出力といい、ほんとすごい監督でらしたのですね。
まったく知らなかったのですが『鉄路の闘い』というのは、セミ・ドキュメンタリーなのですね。『パリは燃えているか』と一緒にこちらもぜひ探してみます!!
コスタ・ガヴラス監督がルネ・クレマン監督の助監督だったというのをトムさまに教えていただき、『Z』も見直そう・・と思っていたところです。

『ザ・キャット』は今月中には届きそうで、とても楽しみにしています♪

溝口監督作品は、お恥ずかしい・・
ほんまこの2作品しか見たことがなくて。学生時代、あれこれ名画座通いをしていた頃に観たのですけど、『祇園囃子』はとても好きでした。脚本家の依田さんの本などもあれこれ読んだのですが、みんな忘れてしまいました・・
わぁ、またぜひオカピーさま、用心棒さま、ジューベさまのサイトにもお邪魔してみますね。

何しろ洋画も邦画も浅く偏ってしか見ていないし、なんだかんだ言ってただのミーハーなので・・また色々と勉強させてくださいね。
いつも、ありがとうございます♪
Posted by 武田>トム(Tom5k)さま♪ | 2007/03/18 10:38 PM

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